外部サイトに発リンクすることで自サイトのSEOパワーが流出? 今だにリンクジュース的妄想に支配される人々

Webコンサルティング会社で、コンテンツマーケティングの支援業務をしていたころの話。

こんなことを言うクライアントが一定数、存在しました。

「出典のリンク、貼らなきゃダメですか?」

またその手の駄々か・・・と面倒に感じつつも、表面上は相手を立てないといけないので、丁寧に返答します。

「はい。内容を引用したり参照したりしたなら、出典としてURLを記載し、発リンクするのは最低限のルールです」

これは至極真っ当な主張ですが、それでも、一部のクライアントは難色を示します。

「まあ、それはそうだけど、外部のページにリンクを貼ったら、うちのサイトのSEOパワーがそっちに流れちゃうんでしょ? それに、コンテンツから外部サイトに離脱されちゃうのも、ちょっとねぇ・・・」

なるほど。外部サイトに発リンクすることで、自社サイトのSEOパワーが流出し、読者も離脱してしまう。だからリンクは貼りたくない、ということらしい。

引用したり参照したりしたのにリンクは貼らない、ということの倫理的(というか法的?)な問題はいったん置いておくとして、以下では、外部リンクを貼ることによるSEOパワーの流出や読者の離脱という懸念について、いくつかデータや根拠を示しながら論じます。

発リンクでSEOパワーは流出するのか?

まず、外部リンクを貼ることで自サイトのSEOパワーが流れるという点について。

これはいわゆる、リンクジュース(Link Juice)という概念が根底にあります。

リンクジュースとは、バックリンク(他のサイトからの被リンク)によって、ページのランキングや検索エンジンでの信頼性が向上するという概念です。リンクジュースは、リンク元のウェブページの権威や信頼性が高い場合に、リンク先のページにもその権威が伝わると考えられています。

以上が、リンクジュースに関する一般的な説明です。たしかに、バックリンクによりページのランキングや検索エンジンでの信頼性が向上するのは、その通りです。

しかし、SEOパワーが発リンク先に流出し、自サイトのSEOパワーが落ちるというのは完全なる迷信であり誤解です。

発リンクによってリンクされた外部サイトの評価が高まることは事実ですが、発リンクを行った自ページの評価が必ず落ちるわけではなく、むしろ逆に発リンクを行ったことで評価が向上することを示唆する報告もあります。

ユーザーにとってコンテンツをより有益にするために設置された発リンクであれば、プラス評価をするということは理にかなっていると考えられます。

SEO対策における発リンクについての考え方と効果について – SEO研究所サクラサクラボ

発リンクによりSEOパワーが吸い取られる、というイメージをしている人も多いかもしれませんが、そんなことはないのです。むしろ、上の引用にもあるとおり、外部サイトへの発リンクはSEOにプラスになる可能性があります。事実、以下の「Google Search Central」 の動画でも、外部サイトへの発リンクの有用性を述べられています。

動画では、「Does linking to other websites help or hurt SEO ?(他のウェブサイトへのリンクは、SEOにプラスになるのかマイナスになるのか?)」 という質問に対して、以下のような回答されています。

linking to other websites is a great wya to provide value to your users.Oftentimese,links heil users to find out more, to check out your sources, and to better understand how your content is relevant the questions that they have.(他のウェブサイトへのリンクは、ユーザーに価値を提供する素晴らしい方法です。しばしばリンクは、ユーザーがさらに詳細を知るために役立ち、情報源を確認したり、コンテンツが彼らの質問にどのように関連しているかをより理解するのに役立ちます。)

https://youtu.be/58zaiOx7TM4

有益な一次情報や参考文献、有益なツールなどへのリンクが貼られていたほうが、そのコンテンツの利便性は高くなりますし、信頼できる有用な情報源であるとのユーザーの認識も強まります。Googleとしても、そのような「ユーザーフレンドリー」 なコンテンツを高く評価するのは自明の理です。

私はこれまで、ディレクターとして数多くのコンテンツ制作に関わってきましたし、また、ライターとして自身でコンテンツを執筆する機会も多かったです。その経験から言わせていただくと、外部サイトに発リンクしたことが原因でコンテンツの評価が下がるようなことは、数字上も体感上も皆無であったと断言できます。何の悪影響もないのです。

ですから、「外部サイトに発リンクすることで自社サイトのSEOパワーが流出」 というリンクジュース的な考えは、もはや過去の遺物だといえます。GoogleのJohn Muellerも自身のTwitterで、リンクジュースのことは「忘れろ」 と言っています。

I’d forget everything you read about “link juice.” It’s very likely all obsolete, wrong, and/or misleading. Instead, build a website that works well for your users.(『リンクジュース』について読んだことはすべて忘れてください。それらは非常に古くなっているし、間違っているか、誤解を招く可能性があります。代わりに、ユーザーにとってうまく機能するウェブサイトを作成してください。)

https://twitter.com/JohnMu/status/1288482499086241793

もちろん、Googleが言っていることが必ずしも事実であるとは限りません。事実というよりは、Googleの願望であることも多いからです。とはいえ、リンクジュースに関しては、John Muellerの言う通り、完全に忘れてしまったほうがいいでしょう。

離脱について

「そう言っても、外部リンク貼ったら自分のサイトから離脱されちゃうじゃん」

たしかに、自サイトからの離脱は、発リンクのデメリットとして語られることが多いです。

発リンクの設置にあたり避けたいのが、自身のWebサイトからユーザーが流出することです。

広告用のサイトやデータの引用元として発リンクを張るのは必要なことですが、自身のWebサイトに無いコンテンツを他者のWebサイトで補おうとすると、せっかく訪問してくれたユーザーが離脱してしまいます。

発リンクとは?SEO効果の有無からリンクを貼る際の注意点まで解説 | WEB集客ラボ byGMO(GMO TECH)

1つ目は、ユーザーの離脱につながることです。これは特に外部リンクを設置している場合に発生する事象で、ユーザーが外部のサイトに遷移したままサイトに戻ってこないことがあるのです。こうした自体を避けるには、あくまでも参照サイト、引用サイトとして用いることをおすすめします。

発リンクとは?SEO効果やペナルティ、チェック方法を解説 | QUERYY(クエリー)

これに関しては、もしユーザーが外部サイトに推移したまま戻ってこないなら、所詮、その程度のコンテンツだった、というだけの話です。身も蓋もない結論かもしれませんが、コンテンツが魅力的であれば、ユーザーは戻ってくるし再訪してくれるのです。逆にいえば、つまらないコンテンツであれば、外部リンクを貼ろうが貼るまいがどのみち離脱されますから、気にしてもしょうがない。

コンテンツが有用で興味深いものであれば、そこに魅力を感じたユーザーは戻ってきてくれますから、外部リンクについてあれこれ心配する必要はありません。そんなことよりも、コンテンツの魅力を磨くことに注力すべきです。以下の記事が、コンテンツを磨く参考になるかと思います。

成果を上げるコンテンツを作る55のアイデア

しいていえば、外部リンクを別タブで開く仕様にして、自サイトが閉じないようにする工夫は、離脱率を下げるうえで有効です。

発リンクの本数について

ちなみに、「1つのページ・コンテンツで、発リンクは最大どれくらいまでならOKか?」 という質問も、クライアントからよくいただきました。多すぎる発リンクがSEO上マイナスになるのでは? という懸念です。

そのときは「過剰でないならいくつでもOKです」 と答えていましたが、そういえば具体的な基準について調べたことはなかったなと思い、少し調べてみました。

いくつかWeb記事を漁っていくと、「Google検索セントラル「ウェブマスター向けガイドライン」」のページに、妥当な数(最大で数千個)と記載があるとのことでした。

ただ確認したところ、2023年7月現在、同ページにそれに該当する文言は見つかりませんでした。何らかの理由で削除されたのでしょう。Googleにとって、発リンクの数はそれほど重大な問題ではないのかもしれません。

結論としては、ユーザーの利便性を損なわない常識的な数に抑えていれば問題ない、というのが私の見解です。
意図的に大量の発リンクを仕込んで悪さを企む・・・みたいな変なことをせず、普通にコンテンツを作っている限りにおいては、発リンクの数は適正な範囲に必ず収まります。気にしなくても大丈夫です。

なお、以下のように、単語レベルで発リンクさせるのは避けたほうがいいでしょう。スパム扱いされるリスクが大きくなります。

単語レベルで発リンクを仕込むのはスパミーなので止めたほうがいい。こちらの例は内部リンクではあるが、外部リンクの場合も同様

ということで、外部サイトへの発リンクに関するお話でした。

もしここまでの主張を聞いて「それでも貼りたくない」 という人がいるなら、それはもうコンテンツ作成やメディア運営に致命的に向いていないということなので、諦めたほうがいいでしょう。