Googleで上位表示するには、今現在上位表示している記事内容を分析して、そこに内容を寄せないといけない。
これはよく言われることです。
コンテンツSEOを提唱する企業のブログでも、そのようなことが提唱されています。
検索エンジンで上位表示されている記事には、ユーザーの求める情報が掲載されています。SEOによって検索結果に表示されている上位10位までの記事内容を網羅すれば、ユーザーが知りたがっている情報を網羅したことにもなります。
SEO対策における網羅性とは?考え方と2つの高める方法を紹介! | ノキボウ|ホームページ制作
検索意図を把握するために、現在上位表示されている競合サイトのページ・コンテンツを分析することは重要です。狙っているキーワードで検索すると、ユーザーの検索意図を満たしているコンテンツがどのようなものか知ることができます。
コンテンツSEOとは?上位表示に有効な手法や成功事例を解説 | ウィルゲート
まとめると、以下のような理論です。
- Googleは検索ユーザーのニーズ(検索意図)に合致したページを上位表示させる
- だから検索上位のページはユーザーニーズを満たした高品質なページである
- したがって、上位表示するためには、既に検索上位にいる競合コンテンツの傾向を分析して、そこに内容を寄せる必要がある
SEOを目的としてコンテンツを作る人の多くは、このような理論に従っているかと思います。コンテンツSEO業界では一種の不文律のような扱われ方をしているこの理論ですが、明確に間違いだといえます。検索上位記事の傾向に合わせて書かないと上位表示しないというのは、誤った解釈です。
なぜなら、すでに上位表示している記事の情報だけが、唯一絶対の正解ではないからです。
これについては、元株式会社アイレップの渡辺隆広氏が、著書で的確に言及されています。
ある時点の検索結果は、その限られた世界の、ある時点のデータベースのなかでは関連性が高いと判断されただけです。決して、それだけがユーザーの求める唯一の正解であり、それ以上に関連性が高い情報は世の中に存在しないなどとは意味しません。検索結果上位のコンテンツを模倣することなど、いかに愚かな行為であるかわかるはずです。
脱キーワード思考のコンテンツマーケティング[2022年版]渡辺隆広 (著)
例えば私がライターとして寄稿した以下の記事。
2023年7月現在、「seo 網羅性」 というキーワードで1位にいます。この記事は、執筆当時の上位記事の内容に寄せて書いたわけではありません。むしろその逆で、上位記事とは全く違うことを主張しています。
執筆に取り掛かった際、手始めに競合リサーチとして上位記事の内容を見ると、その多くは「網羅性を高めるために上位記事の内容を盛り込み、共起語や関連語を自然に使いましょう。また、ユーザーの潜在ニーズに応える情報も重要です」みたいな内容だったのですが、個人的にそれは網羅性という概念を完全に履き違えていると思いました。
だからこそ、世の中で多く行われているコンテンツの網羅性向上施策の誤りを指摘し、網羅性を高めるための本質的な思考を啓蒙する記事を書いたのです。
上位記事に寄せてはいません。それでも1位を獲得しています。
これは先ほどの引用にもあるとおり、現状の検索結果だけがユーザーの求める唯一の正解ではない、ということを示しています。上位10記事の内容を網羅する必要もありませんし、現在上位表示されている記事と同じ主張をする必要もありません。
もう1つ例を挙げます。
Webコンサルティング会社に勤めていたころ、ウォーターサーバー会社のオウンドメディアの支援に関わったことがあります。
あるとき、「食事中 水」 というキーワードを対策する記事を制作することになり、検索上位の記事をいくつかリサーチしていました。どの記事も揃いも揃って「食事中の水分摂取はダメ!」 という全く同じ主張でした。まあ、上位記事を皆が模倣するので、同じような記事ばかりになるのでしょう。
ただ、上位記事の多くが言っているから正しい、ということにはなりません。各種研究や論文などのエビデンスを収集していくうちに、上位記事の主張はいわゆるエセ科学であり、食事中の水を制限する合理的・科学的根拠はない、という結論に至りました。
そこで、「食事中の水分摂取は体に悪くない」 という主張の記事を書いて公開したところ、検索1位を獲得しました。
上位記事の傾向に合わせてはいません。まったく違うことを書いたわけですが、それでも上位表示できるのです。
それはつまり、こういうことです。
ある時点の検索結果に表示された上位コンテンツ群と趣が大きく異なっても、検索した時点のユーザーの興味関心や需要に合致するものであれば検索上位に表示されるということです。
脱キーワード思考のコンテンツマーケティング[2022年版]渡辺隆広 (著)
「食事中 水」 で検索するユーザーの興味関心や需要は、おそらく「食事中に水を飲むのって、なんか消化に悪そうだけど、大丈夫なの? 正しい正確な情報を知りたい」 という点でしょう。
その興味関心や需要に対して、正確なエビデンスをもって回答を示すことができれば、Googleの言うところの「ユーザーニーズに合致した高品質なコンテンツ」 ということになり、上位表示するというわけです。たとえ、検索上位の傾向や主張と異なった内容だとしても。
まとめます。
上位表示するために、検索上位の記事に寄せる必要は必ずしもありません。むしろ寄せないほうがいい。なぜなら、Googleはコンテンツの独自性や専門性、経験性を大変重要視しているからです。特に最近のGoogleは経験(Experience)をより重視する動きを見せており、単なる上位記事の模倣やリライト、コピペ的な記事は評価されづらくなりつつあります。
このたび、検索結果の評価を改善するために、E-A-T に E(経験)を追加しました。つまり、実際に製品を使用している、実際にその場所を訪問している、誰かが経験したことを伝えているなど、コンテンツにある程度の経験が織り込まれているかどうかも評価されます。状況によっては、そのトピックに関連して実体験をもつ人が作成したコンテンツが最も高く評価される場合もあります。
品質評価ガイドラインの最新情報: E-A-T に Experience の E を追加 | Google 検索セントラル ブログ
ようは、専門的な知識や経験を基にしたコンテンツを高く評価したいのであって、検索上位コンテンツの寄せ集めのような付加価値のないコンテンツは本来、評価を落としたいとGoogleは思っています。
もちろん理想と現実は違うので、いまだに検索上位の記事を模倣しただけの、付加価値のないコンテンツが多数、上位を占めているようなキーワードもあります。そこが今のGoogleの限界です。なのでキーワードによっては、検索上位の記事に合わせて、上位記事と同じような内容を網羅するのが確実ではあるのかもしれません。
しかし、それは本質的には価値がないコンテンツです。とりあえず上位表示すれば検索から一見さんが流入するかもしれませんが、他との差分がほとんど存在しない、ありきたりでつまらないコンテンツに価値を感じる人はいないからです。
検索結果に表示された他のページと比較した場合、コンテンツは実質的な価値を提供していますか。
有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成 | Google 検索セントラル
SEOを目的としてコンテンツを作る人は、ここを自問自答する必要があるでしょう。
そもそもの話、Google検索結果(Serps)のリサーチは、上位記事を模倣するために行うものではありません。複数の上位記事の内容をかき集めてツギハギするために行うものでもありません。
そうではなく、記事の主題を決めるために行うべきものです。記事の主題とは、その記事の核となるメインメッセージのことであり、これは意外性や独自性を含んだものでなければいけません。
要は、他記事とは違うオリジナリティが必要なのですが、「何がオリジナルなのか?」 は、競合記事を調べなければ気付くことができません。競合記事を調べる過程で、それらの記事の主張の問題点や不足している要素、彼(彼女)らが見落としている視点などが明らかとなるからです。
ちなみに私が検索結果の上位記事を調べる際のやり方は以下です。
- とりあえず検索結果1〜10位までの記事をチェック
- それらの記事が主張していないが、読者にとって有用でかつ意外性・独自性のある主題は何か? を考える
- その主題を支えるデータや数字、あるいは実体験など、根拠を用意する
SEOコンテンツを作るときは、だいたいこのやり方に従っており、今のところ、これで良い結果を多く得ているので、あながち間違ってはいないと思います。ぜひ試してみてはいかがでしょうか?